認定看護師会ミニコラム
column
  • コロナ禍における褥瘡管理者の仕事

    掲載日:2021年12月7日

    皮膚・排泄ケア認定看護師
    北川 美穂子


    皮膚・排泄ケア認定看護師の北川美穂子です。今回のコラムでは、褥瘡管理者の仕事について書きたいと思います。褥瘡管理者はその名の通り、「褥瘡=床ずれ」をはじめとする皮膚トラブルのケアを院内全体に対して実践しています。ここで重要なことは、発生してしまった床ずれのケアだけでなく、「発生させないように予防する」ことがとても重要で、当院では予防ケアに力を入れて活動をしています。最近の床ずれ予防ケアの取り組みの一つをご紹介します。

    2020年から続いたコロナ禍では、人工呼吸器やECMO(エクモ)を必要とするような重症な患者さんの治療の一環として、1日16時間以上×複数日の「腹臥位=うつ伏せ」になる治療を日本全国で行っていました。このうつ伏せの状態は、仰向けで寝ているときとは違った部分に床ずれが発生しやすくなります。例えば、顔のむくみがとても強くなることや、沢山の医療機器を使用しているため、鼻、口の周り、顎などの顔面や、胸や膝など脂肪が少なく骨が出ている部分に床ずれが発生しやすくなります。そして、うつ伏せのままで16時間以上過ごすため、皮膚トラブルがあっても見つけることが難しかったり、深い傷になってしまう場合もあります。

    当院では、第1波到来前から、うつ伏せの治療をする時の床ずれ予防に早急に取り組みました。治療が安全かつ有効に行えることを最優先にしながら、必要な医療機器や用品を整え、実際のケアを具体的にどのようにするのかを、医師・看護師・理学療法士など様々な職種で検討しました。また、誰が行っても安全・確実に同じケアを行えるように、マニュアル作成やベッドサイドでの指導を行い、試行錯誤しながらブラッシュアップしていきました。その結果、取り組み前と比べてかなり褥瘡発生を予防することができました。これは単に数値の改善だけにとどまらないことだと思います。コロナを克服して元気になった、あるいは残念な結果になった、どちらの結果になったとしても、顔に傷を残すということは気持ちの面に与える影響も少なくありません。発生しやすい顔の床ずれを予防できたことは、そのような精神的ダメージを最小限にできたかもしれないと感じています。また、今回の取り組みは「なんとか予防したい!」という医療スタッフ全員の思いがあってこその活動でした。

    今回はコロナ禍での床ずれ予防についてご紹介しましたが、病院での入院生活、在宅療養中は、一人一人の特有の床ずれリスクが沢山隠れています。床ずれができてしまった時に生じる様々な問題を考えながら、予防ケアの推進に向けて今後も尽力していきたいと思っています。

  • 認知症ケアにおいて最も大切なこととは?

    掲載日:2021年12月7日

    認知症看護認定看護師
    川村 聡美


    今回コラムを担当いたします認知症看護認定看護師の川村です。2025年には、「65歳以上の4人に1人が認知症」の時代が来ると言われています。来年は2022年ですから、もう3年後のことです。昨今、様々なマスメディアで認知症について特集され、認知症について書かれた書籍も増えてきました。自分が認知症になった時にどうするか。今から考えておこう、備えておこうとする人が増えてきているのを感じます。自分に関わることとして認知症に関心を持つ人が増えてきたことで、認知症を取り巻く環境は、大きく変わってきています。認知症の人を中心とした考え方が普及し、認知症ケア加算が導入され、認知症ケアは充実してきています。しかし、認知症に対するイメージはどうでしょうか。「認知症になったら何もわからなくなるから大変だ」「認知症にだけはなりたくない」・・・など、認知症に対するネガティブなイメージは根強く、認知症の人はまだまだ辛い思いをしていることが多いのではないかと思います。

    今回のコラムでは、認知症ケアにおいて最も大切なことは何かということについて、お話をしたいと思います。私は、認知症ケアにおいて最も大切なことは、「認知症の人の立場に立って考えてみて、安心できる環境を整えること」だと思っています。

    大声で叫ぶ、暴力を振るう、何度も同じことを言う・・・医療の現場で認知症ケアの困りごとを集めると、沢山の困りごとが出てきます。しかし、これらの困りごとは、誰にとっての困りごとでしょうか。認知症の人本人は、大声で叫んでしまう、暴力を振るってしまう、何度も同じ事を言ってしまうということに困っているわけではないと思います。大声で叫んだり、暴力を振るわざるを得ないような絶望的な状況に追い込まれている、何度も確認しないとならないぐらい不安な状況に置かれている・・・本人の立場に立って考えてみると、安心できる環境がいかに大切かわかります。医療の現場では、どうしても治療や安全が優先されてしまいます。やむを得ないとは言え、身体拘束もなかなか減らない現状があります。治療や安全を優先することに慣れてしまうと、十分な検討をせずに身体拘束や様々な制限を強いてしまうことになります。私自身も、時折ハッとすることがあります。認知症ケアには、目新しい最新の技術も、最新の機械もありません。人として相手を大切に思い、向き合う。看護の基本とも呼べることが、認知症の人の安心につながります。

    私たちが知ることができるのは、その人の人生のほんの一部分でしかありません。その人がどのような人生を歩んできたのか。家族のために身を粉にして働いてきた、自分を犠牲にして家族に尽くしてきた・・・頑張って、頑張って、沢山の苦労をしてきた人生の終わりの部分で、絶望的な思いや、悲しい思いをしてほしくない。そんな思いで、私は笑顔で接することを心がけ、認知症の人と日々向き合っています。笑顔で接すると、不思議と認知症の人もホッとした表情になり、やがて笑顔になる。これまでの実践の中で、これを実感する場面が多くありました。たった数十秒でも、笑顔で声をかける。これだけで、立派な認知症ケアの実践です。認知症の人の立場に立って考えてみて、安心できる環境を整えること。認知症ケアを実践する時に、参考になればと思います。

  • 肺高血圧症チームについて

    掲載日:2021年11月11日

    慢性心不全認定看護師
    渡辺絢子


    今回コラムを担当させていただきます慢性心不全看護認定看護師の渡辺と申します。私は肺高血圧症チームの活動についてご紹介します。

    慢性心不全なのに肺高血圧症?と疑問に思われる方もいらっしゃると思います。心不全とは、心臓が悪いがために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気と定義されております。心不全の原因は高血圧、糖尿病などの生活習慣病から、虚血性心疾患、弁膜症といった心臓自体の病気、甲状腺の病気など多岐にわたりますが、今回ご紹介いたします肺高血圧症も含まれております。

    肺高血圧症とは、心臓から肺へ送る血管(肺動脈)の血圧が高くなる病気です。肺動脈の血圧が高くなる主な原因は心臓や肺の病気ですが、原因がわからない場合もあります。その場合は「特発性肺動脈性肺高血圧症」と診断されます。特発性肺動脈性肺高血圧症は希少疾患であり国から難病に指定されており、専門医による治療を行う必要があります。

    当院では2018年、多職種による肺高血圧症チームを発足し、専門外来を開設しました。肺高血圧症患者は内服薬、吸入薬、注射薬、在宅酸素療法といった治療の管理を行うだけではなく、血圧や体重などのセルフモニタリング、食事管理、活動量の調整といった多岐にわたる自己管理が求められます。当院の肺高血圧症チームのモットーは、最善の治療を行うことはもちろんですが、患者さんとそのご家族様が望む生活ができるよう、共に悩み、考えながら療養支援を行うことです。より良い支援が行えるよう、毎月1回多職種カンファレンスを実施し、情報共有し、支援方法を協議しております。また、チーム内で最新治療や療養支援方法などの知識、技術向上のための勉強会を行うことや、外部施設へ向けた講演会を実施して北海道内の肺高血圧症治療、療養支援の啓蒙活動を行なっております。

    2021年からはチームで「性教育」についての取り組みを開始しました。最近耳にするようになってきましたAYA世代。AYA世代とはAdolescent and Young Adult(思春期・若年成人)の頭文字をとったもので、主に思春期から30歳代までの世代を指しております。AYA世代は、多くの人にとって親から自立したり、生活の中心が家庭や学校から社会での活動に移行したりするなど、大きな転換期を迎える時期でもあります。特発性肺動脈性肺高血圧症患者はAYA世代の患者も多く、女性の割合が高い特徴があります。ライフステージの変化により直面する性の問題。人間の営みの中でとても大切な一部ですが、他人には相談しづらい、とてもプライベートな問題でもあります。医療者にとっても性教育が必要である認識はあっても話しにくいという問題があり、患者、医療者双方に問題を抱えているという現状があります。大変残念なことですが、肺高血圧症患者が妊娠すると肺高血圧症が増悪することが知られており、日本循環器学会/日本産婦人科学会のガイドラインでは「肺高血圧症の女性は妊娠すべきではない」と記載されております。しかし、その事実を説明して終わりにするのではなく、性行為、避妊方法、将来的に妊娠を希望される場合はどのような治療計画が必要かといったことを共に考えていくべきだということをチームで話し合いました。そして現在、性教育パンフレットを作成しております。肺高血圧症という病気の説明から、妊娠の仕組み、性感染症、性行為、避妊方法など幅広い情報を含んだ構成にしました。このパンフレットを通じて、性について患者、医療者で共に悩み、考えていくきっかけになればと考えております。興味のある方は肺高血圧症外来までお問い合わせください。

    [PDF]肺高血圧症患者のための性のおはなし

     

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