- 認定看護師ミニコラム
- Certified nurse column
2021年11月11日掲載
札幌医科大学附属病院 看護部 慢性心不全認定看護師
渡辺絢子肺高血圧症チームについて
今回コラムを担当させていただきます慢性心不全看護認定看護師の渡辺と申します。私は肺高血圧症チームの活動についてご紹介します。
慢性心不全なのに肺高血圧症?と疑問に思われる方もいらっしゃると思います。心不全とは、心臓が悪いがために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気と定義されております。心不全の原因は高血圧、糖尿病などの生活習慣病から、虚血性心疾患、弁膜症といった心臓自体の病気、甲状腺の病気など多岐にわたりますが、今回ご紹介いたします肺高血圧症も含まれております。
肺高血圧症とは、心臓から肺へ送る血管(肺動脈)の血圧が高くなる病気です。肺動脈の血圧が高くなる主な原因は心臓や肺の病気ですが、原因がわからない場合もあります。その場合は「特発性肺動脈性肺高血圧症」と診断されます。特発性肺動脈性肺高血圧症は希少疾患であり国から難病に指定されており、専門医による治療を行う必要があります。
当院では2018年、多職種による肺高血圧症チームを発足し、専門外来を開設しました。肺高血圧症患者は内服薬、吸入薬、注射薬、在宅酸素療法といった治療の管理を行うだけではなく、血圧や体重などのセルフモニタリング、食事管理、活動量の調整といった多岐にわたる自己管理が求められます。当院の肺高血圧症チームのモットーは、最善の治療を行うことはもちろんですが、患者さんとそのご家族様が望む生活ができるよう、共に悩み、考えながら療養支援を行うことです。より良い支援が行えるよう、毎月1回多職種カンファレンスを実施し、情報共有し、支援方法を協議しております。また、チーム内で最新治療や療養支援方法などの知識、技術向上のための勉強会を行うことや、外部施設へ向けた講演会を実施して北海道内の肺高血圧症治療、療養支援の啓蒙活動を行なっております。
2021年からはチームで「性教育」についての取り組みを開始しました。最近耳にするようになってきましたAYA世代。AYA世代とはAdolescent and Young Adult(思春期・若年成人)の頭文字をとったもので、主に思春期から30歳代までの世代を指しております。AYA世代は、多くの人にとって親から自立したり、生活の中心が家庭や学校から社会での活動に移行したりするなど、大きな転換期を迎える時期でもあります。特発性肺動脈性肺高血圧症患者はAYA世代の患者も多く、女性の割合が高い特徴があります。ライフステージの変化により直面する性の問題。人間の営みの中でとても大切な一部ですが、他人には相談しづらい、とてもプライベートな問題でもあります。医療者にとっても性教育が必要である認識はあっても話しにくいという問題があり、患者、医療者双方に問題を抱えているという現状があります。大変残念なことですが、肺高血圧症患者が妊娠すると肺高血圧症が増悪することが知られており、日本循環器学会/日本産婦人科学会のガイドラインでは「肺高血圧症の女性は妊娠すべきではない」と記載されております。しかし、その事実を説明して終わりにするのではなく、性行為、避妊方法、将来的に妊娠を希望される場合はどのような治療計画が必要かといったことを共に考えていくべきだということをチームで話し合いました。そして現在、性教育パンフレットを作成しております。肺高血圧症という病気の説明から、妊娠の仕組み、性感染症、性行為、避妊方法など幅広い情報を含んだ構成にしました。このパンフレットを通じて、性について患者、医療者で共に悩み、考えていくきっかけになればと考えております。興味のある方は肺高血圧症外来までお問い合わせください。