- 認定看護師ミニコラム
- Certified nurse column
2021年05月24日掲載
札幌医科大学附属病院 看護部 救急看護認定看護認定看護師
田口 裕紀子コロナ禍の心肺蘇生
救急看護認定看護師の田口です。私は現在、教員として看護教育に携わる傍ら、高度救命救急センターでの実践も継続しています。
今回のコラムでは、コロナ禍の心肺蘇生について触れたいと思います。心肺蘇生のガイドラインは5年ごとに更新されます。日本では、ガイドライン2010より世界標準の蘇生ガイドラインを作成することが可能となりました。この度、日本の蘇生ガイドラインであるJRC(日本蘇生協議会)蘇生ガイドライン2020の全てが2021年3月に公開されました。日本のガイドラインでは2015に引き続き、脳神経蘇生と急性冠症候群が取り上げられていますが、今回より妊産婦蘇生も加わっています。更にこの度のトピックとして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策についても示されています。
COVID-19の流行下においては、すべての院外心停止傷病者に感染の疑いがあるものとして対応します。反応や呼吸を確認する際には、傷病者の顔に近づきすぎないようにする必要があります。成人に対しては人工呼吸を勧めていませんが、乳児・小児に対しては、人工呼吸による窒息性心停止の転帰の改善等を考慮し、人工呼吸を行う技術とその意思がある場合には、胸骨圧迫に人工呼吸を組み合わせて実施してよいとされています。
胸骨圧迫の際は、圧迫により受動的な換気が生じるため、エアロゾル(空気中に漂う微細な粒子)の発生が起こりえます。胸骨圧迫によるエアロゾルの飛散を防ぐため、傷病者の鼻と口をマスクやハンカチ、タオル、衣服などで覆うこと、また救助者もマスクを着用することが重要です。
電気ショックに関しては、傷病者に直接接触せずに距離をおいて実施することができるため、院外心停止からの転帰を改善するために、市民による電気ショックが引き続き推奨されています。また、AEDをただちに実施できる状況であれば、胸骨圧迫よりAED装着を優先し、適応があれば電気ショックを先行させてよいとされています。
COVID-19の感染拡大に伴い、現在も多くの蘇生トレーニングコースが中止・延期となっています。しかし、心停止傷病者を救命するため、かつ医療従事者や市民救助者をCOVID-19から守るためには、感染対策を講じた蘇生手順のトレーニングの実施は必要不可欠です。JRCでは、「COVID-19流行期の蘇生トレーニングコース開催手引き」を示しています。こういった手引きを活用しながら、トレーニングを再開することが望まれます。
最後にCOVID-19関連の研修会のお知らせです。北海道救急医学会看護部会では2021年7月3日(土)に「COVID-19がもたらした北海道の救急看護への影響と今後の課題」をテーマにパネルディスカッションを開催いたします(オンラインLIVE配信)。ご興味のある方は、内容等ご確認のうえお申し込みください。
申し込み受付フォーム
参考・引用:
日本蘇生協議会ホームページ https://www.japanresuscitationcouncil.org/