- 認定看護師ミニコラム
- Certified nurse column
2021年04月07日掲載
札幌医科大学附属病院 看護部 がん化学療法認定看護師
大谷真奈美アピアランスケアって何?
私は、がん化学療法看護認定看護師の大谷真奈美です。
がん化学療法看護認定看護師の役割は、がん薬物療法の適正な投与管理とリスクマネジメント、曝露対策、がん薬物療法に伴う症状緩和、自宅での治療管理や有害事象に対応するための個別的な患者教育、患者・家族の意思決定支援と療養生活支援などがあります。
現在、私は婦人科病棟と婦人科外来で勤務しています。
昨年、患者さんから「抗がん剤をやると髪の毛が全部抜けてしまうのか?」「ウイッグは、必ず必要なのですか?」「治療が終わったらどの位で髪の毛が元にもどるのか?」「爪が黒ずんできているが元に戻るのだろうか?」などなど、質問や遠方からお電話を頂くこともありましたので、今回は、アピアランスケアについて取り上げてみたいと思います。
近年、アピアランスケアという言葉を耳にするようになりましたが、皆さまはご存知でしょうか?国立がん研究センターによると、アピアランス;appearanceとは、外見のことを意味し、『医学的・整容的・心理的社会的支援を用いて、外見の変化を補完し、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケア』と定義され、患者が家族を含めた人間関係の中で、その人らしく過ごせるよう支援することであるとあります。
がん化学療法を行う患者さんの中で、よく悪心・嘔吐をイメージされる方が多いと思います。
2009年国立がん研究センターの調査では、がん治療に伴う女性がもっとも苦痛に感じる症状として、第1位に脱毛が挙げられています。悪心・嘔吐は、脱毛よりも下位に挙がっていることから、外見の苦痛は医療者が思っている以上のものだということが示されており、外見変化の苦痛にも、医療者は目を向けていく必要があると思います。また、2010年頃より、制吐剤であるパロノセトロン塩酸塩;アロキシR、アプレピタント;イメンドRなどの出現で、悪心・嘔吐がある程度コントロールができるようになったためとも考えられます。
我国の動向として、第3期がん対策推進基本計画(平成30年3月閣議決定)が掲げられ、がん患者等の就労を含めた社会的な問題の中にアピアランスケアが含まれており、がん診療連携拠点病院として取り組むべき課題として挙げられています。
がん治療(手術、放射線、薬物)によって生じた患者さんの外見の変化を、それぞれ自分らしく受け止め、働きながら、生活ができるように支援していく事が必要とされています。
今年2月に行われた日本がん看護学会では、脱毛に関しての最新情報として、頭皮冷却装置というものができ、国内に認可されているものが2種類あるというものでした(当院には、頭皮冷却装置は導入されておりません)。これは、頭皮全体を冷却させることによって血流を減らし、毛根への抗がん薬の作用を抑え、脱毛を最小限にするというものです。国内で導入されている施設もあるようです。ただ、装置が高額であることなどの課題もあるようです。私も、1990年代に抗がん剤を投与する際、ダンクールキャップというものがあり、数個の氷嚢に7分目位まで1個ずつ氷を入れて帽子の形にし、患者さんにその帽子型氷嚢をかぶせて脱毛予防に取り組んでいた時の事を思い出しました。これは、冷やす温度が一定にならないことや時間と手間もかかり、脱毛効果もないため使用されなくなりました。時を経て、日本人用の頭皮冷却療法が誕生し、最新技術が搭載され一定の温度管理ができるようになり、一人でも多くの患者さんの脱毛症状が軽減されることを期待しています。
はじめの方にも述べたのですが、普段の私は婦人科病棟と婦人科外来で勤務しており、患者さんとは個別に対応させていただく事が多いです。患者さんの外見変化による苦痛をどのように感じているのかを聞いて、患者さんが希望されていることを一緒に考えながら、社会に出ても臆することなく生活ができるように、支援させていただいています。
2019年4月から、がん相談サロン(女性交流会・アピアランスケア講座)も担当させていただいています。女性交流会はCOVID‐19の影響で現在休止中ですが、アピアランスケア講座は5/17(月)から再開予定となっています。オンライン会議システム「ZOOM」を用いて開催する予定です。気軽に、参加していただければと思っています。
最後に、日本の地域によっては、ウイッグなどの助成金制度があります。北海道は、まだ助成金制度がないため、今後このような制度もできればという希望を持ちながら、患者さんの負担が少しでも減ってくれることを、私は願っています。
がん相談サロン:URLこちら↓
https://web.sapmed.ac.jp/kanwa/salon/index.html
引用・参考文献
1)野澤桂子、藤間勝子:臨床で活かす がん患者のアピアランスケア.南山堂
2)メディカ出版:yori-sou がんナーシング 2021 Vol.11 NO.1
3)メジカルフレンド社:看護技術 2021 Vol.67 NO.2