- 認定看護師ミニコラム
- Certified nurse column
2022年01月11日掲載
札幌医科大学附属病院 看護部 がん放射線療法看護認定看護師
工藤 知美「乳がん看護セミナー」を終えて(放射線治療担当者から)
がん放射線療法看護認定看護師の工藤です。新型コロナウィルスの流行は、最近少し落ち着いているようですが、また新たな変異株の流行の兆しがあり、まだまだ気が抜けない日々が続いています。そんな中11月に、認定看護師会主催で「一歩踏み込む乳がん看護~その人らしさを支えるために」というテーマでセミナーを開催させていただきました。コロナ禍ということで今回初めてオンラインセミナーとなりました。普段参加いただけない遠方からの参加をいただき、うれしく思いましたが、個人的には、皆さんと対面して意見交換したかったという思いもあります。次回は、対面とオンラインと合わせて開催できたら良いと思います。
放射線治療は、がん治療の大きな役割を担っていますが、放射線治療という言葉は良く知っていても、実際はイメージしにくい治療のようです。「放射線を照射するとき熱さや痛みがあるのではないか」、「髪の毛が抜けてしまうのではないか」、「何か怖い」「同居の家族に影響はないか」などと不安になるようです。乳がんの術後の放射線治療は10-15分程度、そのうち実際に照射している時間は2-3分程度です。治療の姿勢(手を挙げた状態でまっすぐ仰向けに寝る)を保つことが、痛みがあり大変な方もいらっしゃいますが、照射自体は何も感じることがありません。脳転移の治療などで頭部に照射する場合は脱毛がみられますが、乳房の照射では脱毛することもなく、もちろん家族や周りの方への影響もありません。
乳がんの術後照射では約1か月間毎日通院する必要があります。仕事、育児、介護、家事と社会的役割を担いながら、毎日照射に通うのは本当に大変だと思います。少しでも通院の負担を少なくできればと、ほんのささいなことですが取り組みを行っています。例えば、初回治療から最終回まで同じ時間帯の予約になるのですが、生活のリズムをつくり予定を立てやすいよう、毎回予約時間通りに治療ができるよう調整する、他科受診や検査がある時にはできるだけその時間帯に近くなるように、用事がある時にはできるだけ希望の時間になるよう治療時間を変更する、毎日の会計を週1回のまとめ払いができるようにするなど、治療を待ち時間なく受けられ、スムーズに帰れるよう取り組んでいます。
放射線治療は疾患にもよりますが、開始したらできるだけ休まずにスケジュール通りに照射することが大切です。放射線治療に対する不安が和らぎ、安心して治療が受けられるよう、放射線治療室スタッフと協力し合いながら看護しています。毎日、患者さんとお話しできる時間は短いのですが、少しの変化にも気づけるよう観察し、タイミングを図りながら必要な有害事象の説明やケアの方法を提案させてもらっています。放射線の有害事象の事だけでなく、仕事や家庭での悩みや困りごと何でも話してもらえるよう関われたらと思っています。治療中は週1回、放射線治療医の定期診察があります。診察日以外でも体調不良や有害事象の変化で診察が必要だと判断した場合には、担当医に連絡し、すぐに対処できるようにするなど、毎日休まずに治療を終えられるようサポートしています。
乳がんの治療は、診断~手術、薬物療法、放射線治療、経過観察、もしかしたら再発の治療と長い期間におよびます。その中で、患者さんは悩みや不安で精神的に不安定になったり、社会復帰に困難を感じ他者の助けを必要とする場面が何度もあると思います。各治療場面での体験や思いが次の治療場面での対処や行動につながっていくのだと思います。今回のセミナーを通して、どの治療時期でも適切にサポートできるよう、各医療機関、各部門と連携しながら、しっかりケアをつないでいくことが大切であると改めて実感しました。またこのような機会を通して、皆さんと学べることを楽しみにしています。